日経BP社主催のMDMサミットに出席してきた。

無料ではあるが、1日セミナーにも関わらず朝から大入りで、約300名の出席者であった。マスター統合課題を抱えている企業が多いということか、それともはやり物への興味からか。
 基調講演は、米MDMインスティチュートのアーロン・ゾーン氏。MDMを主導するビジネスドライバーとしてクロスセル・アップセルのシナジーコンプライアンス、ワンストップサービスによる顧客満足向上、M&A対応など5つを挙げられていた。これらがMDMの結果得られる効果・利益であるという主張だが、いまひとつ納得感が得られない。続いてMDMベンダーソフトの対比である。氏の考えとして、全てのERPや他の製品にはMDMツールが付加してくるので、ベンダー間のMDMを繋ぐということを考えねばならず、単独のMDMツールだけで収まることはなくなってきていると。全体としてMDMありきでツール依存の話が多くやや期待に反した。
 次は、オラクル社の発表で韓国の大手自動車会社での適用事例他。自動車会社では社長兼CIOが主導し、マスタデータが正しくなくてはビジネスプロセスをいくら整備してもうまくいかないとの考えに沿って、トップダウンMDMを実現した。演者はこの事例を、水がタンクから水道の蛇口に届くまでの設備が老朽化した場合、設備だけ新しくしても中を通る水(これがデータ)が汚くてはきれいな水は飲めないと例えた。経営トップが、プロセスを司るデータの重要性を認識しビジネス効果を得ている。韓国の底力を感じさせる事例であった。
 協和発酵キリンは、20年以上前からメタデータ、モデル管理といった情報資源管理を実践されていて、MDMの仕組みは97年に既に創られている。途中リポジトリMDMのシステム環境のリプレースを経て、最近ではトランザクションデータを汎化するHUBの仕組みを構築した。
 他に、インフォテリア、IBMアビームコンサルティングのベンダーセッションがあった。
 IBMセッションがMDMの本質的な話をされていた。保険の契約を例に、人とロールを中心に据えたパーティ中心型のデータモデルがビジネス効果を上げるために必要と。データ重複や名寄せ、クレンジングは当たり前で、それだけではROIは得られない。協和発酵キリンのように長い歴史の中で自社のデータモデルを培ってきた企業は良いが、それが無い企業はIBMのパーティ中心型データモデルを適用すれば、即応性が高い。ベストプラクティスとしてのデータモデルがあってそのモデルに自社業務がマッピングできれば、ツールは何でも良いことになるという内容であった。
 最後に、出席者から提出された質問にパネラーが応えるという形式でパネルディスカッションが行われた。パネラーとして、本田技研の菊地氏が参加された。PORK-DBという製造工程におけるノウハウDBを紹介された。製品、工程、設備マスタにノウハウを結びつけたもので、工程単位で3D映像や、ビデオ映像でノウハウを検索することができるという中々の優れもの。社内のグーグルのようなものを目指したという。
 MDMでのROIをいかに算出し、システム導入の承認をいかに得るかという質問や、運用維持の体制としてデータスチュワードの必要性が訴えられた。パネラーとして登壇された伊阪コンサルタントのホワイトペーパーが配布された。やや難解だが、MDMの動向を探るのには充分な内容が網羅されていそうだ。
 MDMを目的化してはならず、あくまでビジネスベネフィットを得るためのツールであることを忘れてはならない。